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ナオティがこれまで考えてきたことや経験してきたこと、興味などをネタにしていろいろなことを書いていきます。

「正社員にあらずんば、人に非ず」という風潮とはなんなのだろうか?

今日はちょっと社会的な記事を書きます。

僕は今、フリーランスでライター業をやっています。

毎日のようにネットを経由してクライアントさんから記事を受注しては、なるべく短時間で書き上げて、その対価として報酬をもらっています。いずれは、自分でも仕事を創りだせるようにしたいとも思っています。

 

これが僕の現状ですが、実は正社員として働いた経験はありません。驚く方もいるかと思いますが、大学生→フリーター→大学院生→ライター(いまココ!!)という流れで来ているのです。

 

そんな僕を見て、おそらく社会で頑張っている人の中にはこう思う人もいるのではないでしょうか?

「あなたは”仕事”をしたことがないんですね」とか「あなたは”働いたこと”がないんですね」と。

 

なるほど、世間一般でいう”仕事”とか”働く”とは、「どこかの企業や役所などに正社員、もしくは正規職員として雇用されて労働すること」を意味するようですからね。

しかし、果たして今の時代においてこの考え方は通用するものなのでしょうか?

 

仕事をする際の形態は正社員の他にもあるはずなのに・・・

 今の時代、労働の形態は正社員以外にもいろいろあります。

具体例を挙げますと、派遣社員契約社員、アルバイトにパートといったところです。これが役所であれば常勤職員や非常勤職員となりますし、研究機関であれば有期雇用の研究員というのも少なくありません。

 

特にここ20年は、バブル崩壊後の規制改革や人件費削減などの流れもあり、正社員以外の「非正規労働者」も増えてきています。2015年のデータでは働く人の4割が非正規雇用とすらいわれています。

 

皆さんも毎日のようによく行くコンビニの店員さんを見てみてください。レジに立っている人のほとんどがアルバイトの方ではないでしょうか?また、皆さんの職場でも派遣社員契約社員、パートやアルバイトで働いているという人はどのくらいいるでしょうか?おそらく、正社員以外の方の割合が少なくないのではないでしょうか?

 

これらの人たちも、正社員と同じように自分の時間を労働に当てて仕事をし、その対価でお金を得ているのです。つまり、この点においては正社員以外の人も「仕事をしている」ということになるはずなのです。

 

それなのに、世間一般でよく言われる「仕事」の考え方に照らせば、こうした派遣社員契約社員、アルバイトなどは「仕事をしている人間」とすら認められないということになっています。ある企業の中で事業を進めるのに、正社員には正社員の役割があり、パートにはパートの役割があって、それぞれの役割をきちんと果たすことで、よほどのことがない限りは円滑に事業が進むのに、です。

 

たしかに正社員以外の労働形態は極めて不安定な立場です。頑張っていてもいつクビを切られるかわかりません(ただ、この点は今の世の中であれば正社員でもあり得ないとも言い切れませんけどね)。そして、ボーナスがないうえに企業年金にも未加入、そして職場によっては社会保険への加入すらないという場合もあります。

 

そのためか、結婚などでも正社員でなければ相手にされないということも少なくありません。いや、それどころか恋愛の際にも支障をきたすことはあります。例えば、片一方が正社員で、もう片一方がアルバイトのカップルがいたとしましょう。そのアルバイトの方が男性であれば、おそらく女性が正社員であったとしても、女性の親御さんは心配のあまり結婚を認めようとしない場合もあります。

 

いやはや、まさしく「平家にあらずんば、人に非ず」ならぬ「正社員にあらずんば、人に非ず」という風潮ですね。

 

「正社員にあらずんば、人に非ず」の風潮はどこから?

このような「正社員にあらずんば、人に非ず」という風潮ですが、いったいどこからきているのでしょうね?

 

僕が思うに、これは高度経済成長の時代のモデルをそのまま引きずっている、というところからきているのではないでしょうか?

もうずいぶん昔のことですが、その頃の日本は今と違って上り調子でした。「ともかく働けばみんな豊かになれる」とみんなが一心不乱になっていた時代のことです。

 

その後、80年代に入ってバブルの時代がやってきました。ちょうど僕が生まれて間もないころです。バブルの時代では人材が不足していたということもあって、正社員の口がまさに引く手あまたでした。何社も内定を得たという話もざらで、企業側もかなり「おいでおいで」といわんばかりの姿勢でした。

 

いまでいう非正規雇用もありましたが、20代以上の人の多くが正社員だったという、今からすれば夢のような(?)時代だったわけです。

 

その後、90年代に入りバブルが崩壊してからは企業の人材採用に対する財布のヒモもかなり堅くなった、というのは言うまでもないことかと思います。むしろ、人件費の削減のために派遣社員契約社員といった人を大量に活用するようになっていったのです。

 

ちょっと長くなりましたけど、時代がこのように変わったのに、いまだに「正社員にあらずんば、人に非ず」という風潮がまかり通っているのは、日本がまだ経済成長していた時代の考え方から脱し切れていないからではないでしょうか。きつい言い方をすれば時代遅れといわんばかりに。

 

しかも、さらにたちが悪いのは日本の経済成長そのものが世界的に見ても成功した事例とされているという点です。もちろん、僕たちがこうして豊かな暮らし(少なくとも物質面では)ができるのは、その時代の人たちが汗水たらして頑張ってくれたおかげ、というのもありますけど、あまりにも成功したモデルであるため、そこから抜け出すことができない、というトラップに陥っているのではないでしょうか。

 

個人レベルでも成功した経験を脱却する必要に迫られたとき、そこから簡単に抜け出すのはなかなか難しいものです。それと同じように経済成長していた時代の成功モデルを引きずってここまで来てしまったことに、あの時代の「正社員にあらずんば、人に非ず」という考え方が今でもゾンビのように生きている要因があるのではないでしょうか。

 

いい加減意識を変えたほうがいいのでは?

「正社員でなければ、人に非ず」という考え方は今でもどこか支配的ですけど、この考え方はこれからの時代は通用しなくなると思います。

 

今この時点でさえ、正社員の椅子は減り続けていますし、その一方で非正規労働者は増え続けています。役所だってそうです。正規職員の椅子は減り続けているかわりに、減った分を非常勤職員の椅子を増やすことでカバーしているのですから。

 

そのうえ、もはや大企業の社員でも安定しているとすらいわれなくなってきていますし、これからはAIなどが本格的に企業現場で導入されればますます人手が少なくても現場が回るとさえいわれています。このような変化が迫っているのに、いつまで「正社員にあらずんば、人に非ず」にこだわっているのでしょうか?

 

むしろ、その意識、今からでもちょっとずつ変えてみた方がいいのではないでしょうか。